仕事

相手と戦わないことこそが、一番の勝利なんじゃないかな?

街を歩いていると、至る所でいざこざや言い争いが起こっている。
ちょっと肩がぶつかっただけで、声を荒げる人。
店員に対して横柄な態度をとる人。

それぞれが自分の正当性を主張し、”自分は間違っていない”と主張する。

たしかに当人にとっては、正しいこと、当然のことをやっているだけなのかもしれない。
けれども、それで本当に問題が解決して、コトがうまく運ぶのだろうか?
返って無駄な恨みを買ったり、ギクシャクした関係性になったりと、マイナスの方向に進むことはないのだろうか?

僕の経験上、感情に任せて主張を通そうとすれば、相手からの反感を買うコトが多かった。
どれだけ正しくても、どれだけ相手の役に立つことでも、少しでも怒りや嫌悪感が混ざるだけで、想いはねじ曲がって伝わると考えておいた方がいい。

大切なのは、孫子の兵法にもあるように「戦わずして勝つ」ことである。
人間はそれぞれ価値観が異なる。そんな人間同士が対峙している時点で、それは「相手を打ち負かすコト=戦っている」ことになるんです。

戦いの勝利者だけが、持ち上げられる

世の中で注目されて目立つのは、戦いに勝利した者である。
イチローは他のどの野球選手よりもヒットを量産し、スティーブ・ジョブズはアップルを世界有数のIT企業へと押し上げた。彼らのコトは恐らく誰もが知っていて、彼らに憧れる人は沢山いるだろう。たしかに戦いに勝利し、頂点に立ったのは素晴らしいことだし、尊敬されるべきだ。羨ましい気持ちがないわけではない。

ただその裏側には、無数の敗者が存在していることを忘れてはならない。

勝者は少数、敗者は多数。
それが世の中のルールである。
注目されずに散っていった、無数の残骸があちこちには散らばっていて、
僕たちはそちら側になる可能性の方が高いのです。

同じ土俵に立たない。とにかく”戦わない”

だからこそ大切なのは、戦わずして勝つためにはどうすれば良いかを考えることなのだと思います。
相手と同じ土俵に立たず、譲り合いの心を持ち、相手のことを尊重する。
決して向かい合って戦うのではなく、お互いをWin-Winにするような関係性。

それは一見穏やかで、地味で、目立つような戦いではない。

けれども一度やってみると、その困難さがわかるはずだ。
自己の感情との戦いが水面下では行われていて、”戦場に立たないこと”が悪手だとわかっていてもなかなかできない。

人間は戦いが大好き

もしかしたら、「私は好きで戦っているんじゃない…」
という方がおられるかもしれない。
でも意外なことに、人間は誰しもが”戦いたい” ”勝ちたい”という欲求を持っているんだと思う。

なぜ人はスポーツが好きなのか。
それは相手と争って、勝つことに喜びを感じるからだ。

高い立場に立ちたいのはなぜか。
圧倒的権力で他者を支配したいからだ。

どれだけ取り繕っても、人間には人と争いたい欲求がある。まずはそれを認める必要がある。

僕自身も例外ではない。
人より上手い文章を書きたい。色々な人に読んでもらえるブログが書きたい。
そんな気持ちを持っていて、知らずしらずの内に戦場に立っていることがある。

戦場に立たない勇気

ここで大切なのは、あくまで”この戦いは本当に必要なのか?”
を考えること。

戦うことはあくまで手段であって、本当の目的は別にあるはずです。

例えば部下に仕事を任せたいなら、あくまで目的は、”部下が仕事を任せられる人物になること”である。
ここで大抵の上司は、”こんなことだからダメなんだ”とか”言われた通りにやればいい”と口を出してしまうのだけれど、感情を思うままにぶつけたって、恐怖でコントロールしたってコトは上手く運ばない。反感を買ったり、関係がギクシャクしたりする可能性が高い。
なぜなら、知らずしらずの内に、目的が”自身の感情を吐き出すこと”になっているからだ。

今一度、胸に手を当てて考えてみてほしい。

あなたの行動は、目的のための手段になっているだろうか。
それともいつの間にか目的がすり替わってはいないだろうか。

もし本当に目的を達成したい、状況を変えたいと望むのならば、戦場へと向かう自分に気づき、
一歩踏みとどまるべきです。そして「戦わずして勝つためにはどうしたらいいか」を考え続けないとダメなんだと思います。

最後に

”戦わない”という選択肢を選ぶには、自身を省み、目的地を見つめ、感情をコントロールできなくてはなりません。
それは地味な作業であり、誰にも注目されるコトはありません。

人は誰しもドラスティックな劇場を求めます。
”タイタニック”の人気は、氷山にぶつかり、豪華客船が沈むという劇的なストーリーに支ええられている。
港まで無事にタイタニック号が帰ってくることなど、映画の視聴者は誰も望まないだろう。

けれどももし、タイタニック号に自分が乗っていたら。言わずもがな、何も起こらず、無事に港につくコトほど、素晴らしいコトはないはずだ。

派手ではない、地味な物事のなかにこそ、価値は潜んでいる。
決して賞賛や名誉が得られるわけではないけれど、”戦わない”という挑戦で手に入る価値はきっとあなたを支えてくれるだろう。