シンプルで持たない暮らしが注目される時代。
世の中はモノで溢れているにも関わらず、次から次へと新しい商品が生まれてきます。
広告やテレビタレント、youtuberは商品を紹介し、購買意欲を掻き立てます。
消費者である私たちは欲望に逆らえずに流されるまま、知らずしらずの内に消費の渦に巻き込まれていきます。
“本当に好きではない”モノに囲まれた生活。
気付いた頃には何が好きで、何が嫌いなのかさえ分からなくなっているのかもしれません。
誰もが憧れる”好き”に囲まれた生活。
人生そんなに甘くない、
絵空事だと思われる方がおられるかもしれません。けれども実際には、好きだから頑張ろうと思えるし、より良くしようと努力を続けることが出来ます。
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本作「好きなものを売って10年続く店をつくる」では、魅力的な店主が実体験を元に”好き”の重要性を教えてくれます。
店舗経営の心がまえ、人との繋がり、お店を作った経緯etc…。
『雑貨カタログ』の編集長である作者が、店主へ忌憚のない質問をぶつけます。
雑貨が好きでお店を愛している作者だからこそ、回答者は誠実にまっすぐな本音を語ってくれるのだと感じました。
何か一つでも心に残るメッセージが届くことを祈っています。
好きなものを売って生活する
モノが飽和して売れない時代であっても、利益を上げ、楽しみながら商売をしているお店があります。
大規模である必要はなくて、数人で営む小規模な仕事。
お店を続けていると、”やりがい”や”面白み”はもちろん、失敗が苦労が付きものです。お店を始めることは、さほど難しくなくとも、長く続けることはとても難しいことなのです。
それにも関わらず、私たちは”好きを仕事にする”ことに憧れ、諦めきれません。
好きを売る=自己表現
なぜなら、“好き”を発信することは自己表現に繋がるからです。
誰もが自分のことを知って欲しい、理解して欲しいという承認欲求を持っています。
TiktokやInstagramなどのsns。他者と繋がりたい気持ちの奥底には「他者に認められたい」根源的な欲求があるもの。
「好きなものが売れる = 相手に自分の好きなものを認めてもらえた」ことを意味します。
モノを媒介として、直接興味のやり取りが出来る。
これが好きなものを売る楽しさの醍醐味なんだと思います。
好きなもので商売し、長く続いているお店
この記事で紹介するのは、作者が”長期的に続く“と確信したお店です。
創業30年越えから、オープンして4年ほどのお店もあります。
ただ、間違いなく10年以上続くであろうと自信を持ってお勧めできる場所。
一体、長く続くお店の特徴はどのようなものなのでしょうか?
1.Sublo(36)
サブロは東京吉祥寺にある文具店です。お店の名前は店主の村上幸さんの祖父、三郎さんの名前から取っています。
「サブロ」のビジネスモデルはユニークで一般の店舗とは少し違っています。
一般的な文具店の場合は、メーカーで製造した製品を卸業者へ卸し、店はそこから仕入れます。
けれども「サブロ」の場合は、直接メーカーから仕入れたり、オリジナル製品を製造することでコストを下げているのです。
利益を確保するポイント
- メーカーから直接仕入れる。
→卸売業者が中抜きする利益を削減できる - 自社製品を製造する
→自社で企画・開発から製造まで行うことで、他社の上乗せ料金を削減できる
特定の分野に絞って勝負
一口に雑貨店といっても、扱う商品は多岐に渡ります。
日用品やキッチン用品などの生活雑貨や、机家具のようなインテリアも雑貨と呼ぶことが出来ます。
アイテムにはそれぞれ”癖”のようなものがあり、取り扱いのコツがあると村上さんは言います。
最初は何か核になるアイテムを決めて専門性を持たせて、そこから少しずつ派生させて発展させていくほうが、うまいやり方に違いない。
ほかにも、狭い店舗を小さな文具店でぎっしりと埋め尽くすという、店のディスプレイのイメージがあったことがあげられる。
店で売るものを文房具のような小さくてほそぼそとした商材に絞ってしまうと、広い店の場合、空間を埋めるのに相当な数の商品が必要で労力がかかる。けれども狭い空間であれば、それは逆に欠点ではなく長所になるはずだ。
狭くても、ものが小さいので、数を多く並べることができるのだ。
例えば狭い店舗の場合には、モノが小さい文房具をメインに陳列することで、大量の商品を並べることができます。
お店が狭いというデメリットは、商品のサイズやディスプレイを工夫することで克服できるのです。
海外製品の輸入と自社製品の開発
商売の基本は安く売って、高く売ること。
どのような付加価値を商品に与えられるかが肝心です。
数が少なく珍しい、あるいは魅力的な商品には高い値段が付きますが、仕入れは難しく、工夫が必要です。
オリジナル商品の開発では、プロダクトデザイナーの植木明日子さんと一緒に「水縞」というオリジナル文房具ブランドを立ち上げられています。
水玉柄が好きな植木さんと、縞模様が好きな村上さんが文房具の制作ユニットです。水玉と縞々をモチーフにしたお洒落な文房具(マスキングテープや付箋など)を販売しています。
イロイロペーパーバッグ ¥495(税込)
水縞が今までにデザインした色々なグラフィックのかけらがペーパーバッグになりました。
こんな面白い柄もあったのか~とワクワクします!
いろいろな組み合わせがありますので、どんな柄が入っているかはお楽しみです~。 pic.twitter.com/jBFATAouS7— 36 Sublo (サブロ) (@36Sublo) May 12, 2023
海外仕入れについては、タイの文房具を仕入れているそうです。
植木さんがタイのホテルと仕事をしていたことがきっかけだったとか。
日本よりも値段が安く、独自の文化を生かした味わい深い商品に触れると、どこか懐かしい気分になるといいます。
タイの文房具には、日本の昔の文房具にあるレトロ感の上を行くものがあるんですよ。和紙の質感に近いラフな神や、グラシン紙、ザラザラとした風合いの紙で作った茶封筒。懐かしいタッチのイラストレーションが描かれたスタンプなど。学校で使用する知育教材の会社がつくっていて、種類もたくさんあるんです。
独自に開発した商品と独自の仕入れルートによって、他社と差別化する。
他者には真似のできない工夫が付加価値をもたらし、安定的な利益を確保することに繋がっています。
2.ハンドメイド雑貨店「ハイジ」
ハイジでは店主の藤永さんが、ミシンで一つひとつの商品を丁寧に作っています。
レジの横にはミシンが置いてあり、店内にはミシンのカタカタという音が心地よいリズムで鳴り響いています。
けっして大量生産、大量消費には染まらない、じっくりと丹精込めたモノ作り。
長く大切にモノを扱う精神がお店には宿っているようです。
趣味が仕事になる時
藤永さんには、美大でインテリアの勉強をした後、設計事務所や百貨店、雑貨店の勤務を経て、自分で手作りした小物を売ることがを生業にしたいと制作に没頭していた時期があるそうです。
布が好きなんですよね。昔から集めた布を使って、いろいろなものをつくっていました。
特にはまっていたのはアップリケ作り。著作権の切れている昔の書籍に掲載されている図版や洋書の中の絵柄を、『プリントゴッコ』(年賀状などのはがき印刷や布印刷ができる家庭用小型印刷器)を使って無地の布にインs津してカットし、ミシンで端の始末をして完成させる。おもしろくて次から次へといくつもつくってしまうんです。
特別な体験を提供する
手作りしたアップリケを無地のシャツやバッグに付けるだけで、世界に一つにしかない作品が完成します。
お店にミシンを持ち込んで、ライブでアップリケを布に縫い付けるパフォーマンスをされています。
- 事前にアップリケを作成しておく
- お客さんに好きなアップリケを選んでもらう
- ライブパフォーマンスでアップリケを布に縫い付ける
- 作った商品を販売する
目の前で自分のためだけに作られるオンリーワンの商品。
モノの価値以上に”体験”の価値が「ハイジ」の商品には加わっています。
仲間のハンドメイド製品を販売する
商品を売りたいと思っても、販売する場がない。
藤永さんは、そのような想いをしている、昔の自分のような人たちに販売する場所を提供したいと考えたそうです。
お店に置く商品の基準は”楽しみながらつくっていると感じられる“、”やりたいことが見える“作家さんの商品。品質のよく、「ハイジ」に似合った商品をセレクトしています。
今では50ほどのハンドメイド作家さんと契約しており、発達障害を支援する団体から仕入れたブローチや公立の養護学校の生徒たちが作るアクセサリも販売。
自身の利益だけではなく、仲間とともに楽しみながら共存・共栄しようという姿勢に沢山の人が集まってくるのだと思います。
最後に
誰でも好きなことには一生懸命になり、勉強したり工夫したりするので、自然に上達する。
皆さんご存じの”好きこそものの上手なれ“という諺の意味合いです。
好きだからこそ情熱を傾けることができ、楽しんで取り組むことができます。
たしかに”好き”だけで生活することは、無謀に覚えるかもしれません。しかし、実際に理想を形にしている人たちは大勢いるのです。
本書を参考にしてみてはいかがでしょうか。
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