読書

シェア型(貸棚)本屋を始めたい方へ。サービスを利用した手順と感想

この記事で解決できるお悩み

  • 本屋をはじめてみたい!

  • 貸棚サービス(シェア型本屋)って?

  • 実際にサービスを利用した人の意見が聞きたい

どんどん街から本屋さんが消えています。

書店合同会社のアルメディアによると、2020年5月1日時点の書店数は1万1024店。2000年と比較すると、その数は約半分にまで落ち込んでいます。

おじさんが1人で営むような小型店だけでなく、大型店も厳しい状況に晒されています。

「気持ちが落ち込んでいる」

「理由のわからないモヤモヤを抱えている」

「新しい発見を求めている」

そんな時にふらっと本屋に立ち寄れば、解決のヒントや好奇心が満たされるものです。

心の隙間を埋めてくれる場所が姿を消していくのは、辛く悲しい。

この記事では「本屋を始めてみたい方」に向けて、誰でも本屋の店主になれるシェア型(貸棚)本屋の始め方と実際にやってみた感想を記載していきます。

本が大好き、本屋を始めてみたい方の参考になる記事になっています。

シェア型本屋で本屋の店主に

本屋が減り続ける時代の流れを止められないなら、「自分が本屋を始めるしかないんじゃないか?」。いつしかそんな風に考えるようになりました。

だからといって資金は必要だし、書店で働いた経験がないので、何のノウハウもありません。そんな折に目に飛び込んできたのがSELFBOOKSの存在でした。

SELFBOOKSは滋賀県大津市の「ブランチ大津京」内にある無人本屋です。奈良のふんせんかずらの姉妹店です。

店内は無人で、会員になった人だけが入店できるシステム。

お店の開放DAYやイベント時にはスタッフが常駐し、一般の方々も来店できます。

SELFBOOKSの貸棚サービスは、店舗の棚の一区画を借りて、自由に本を販売できるというもの。

どのような本を置くか、レイアウトの方法などは自由に設計してOKです。

支払う料金は

貸棚料:2ヶ月1500円

手数料:販売商品の15%(2023年8月時点)

くらいなもので、まったくと言っていいほどリスクがありませんでした。

貸棚サービスの利用手順について

以下の流れで貸棚サービスの準備を進めていきました。

  1. SELFBOOKと貸棚サービスを契約する
  2. お店の屋号を決める
  3. 商品の準備
  4. 値付けとポップの作成

1.お店との契約

SELFBOOKSに問い合わせ行い、貸棚サービスの契約を結びます。

ホームページのお問い合わせフォームからメールすれば、出店までの詳しい手順を教えてもらえます。

2.お店の屋号を決める

屋号はお店の顔になります。どのような本屋にしたいのかを店舗名には込めました。

名付けた店名は「本屋雨のしずく」です。

ぼくは「本屋」という存在が雨の降っている(=人生の苦しい時期)時に逃げ込める止まり木のような存在であって欲しいと考えています。

人生には辛く悲しい雨が降り注ぐことがある。そんな時には傘をさし、じっと雨が降り止むのを待ちます。傘はシェルターのような役割を持ち、厳しい環境から保護してくれる。

そんなお店でありたいと思っています。

3.商品の準備

スペースが限られているため、棚に置けるのは単行本が30冊程度です。

いかに自身の趣向や意志を反映できるかが課題でした。

家にある蔵書、BOOKOFFや古本屋さんで好みの本を買うなどして必要な数を揃えました。

ちなみに店内はこのような感じ。

美術・歴史・絵本・洋書・小説等、お店によって特色はさまざまです。

実店舗をお持ちの古本屋さんだけでなく、趣味でやっている個人まで、誰でも棚を借りることができます。

4.値札とポップの作成

値札は用意されていたテンプレートを使いました。

商品の値段、屋号、商品名を記入して背表紙に挟みます。

値付けは自由なので、思いのままに付けちゃって大丈夫です。意外な値段で売れることも十分ありますよ。

ちなみに僕は小説と新書をメインに販売しており、大体400円前後で統一していました。


ポップは100均の色紙台にお店をイメージした屋号をマジックでペイントしました。

ポップの代わりに好きなキャラクターを置いている人や、何も手を加えず商品ラインナップで勝負している人など、棚の使い方はさまざまでした。

貸棚サービスのメリット

貸棚サービスを実際に利用してみて、いろいろな気づきを得ることができました。

サービスを利用することで得られるメリットをご紹介していきます。

1.本屋体験ができる

実際にお店をやってみないと分からないことが多々あります。

「本は好きだけれども、本を売るのは好きじゃないかも…」

「本屋を作るには、どんなプロセスを踏めばよいのだろう?」

お店を作り上げる過程で、それらの疑問は一つひとつ解消されていくはずです。

なぜなら立ち上がる問題を解決することなしに、あなたのお店は完成しないからです。

知識は持っていたけれど、実際に行動に移すと上手くいかないことや予想もしないことが起こるもの。

お店を持つ楽しさや厳しさを学ぶことができるでしょう。

一元は一見にしかず。

人から聞いた話よりも、自分の目で確かめた方がより濃い経験が得られます。

2.費用が掛からない

テナント料・家賃・光熱費・改装費・書籍の仕入・人件費・事務用品費など。

実店舗を持つ場合、少なくとも数百万の資金が必要になるでしょう。

これは多くの方にとって、今日明日で簡単に用意できる金額ではありません。

銀行からの融資やクラウドファウンディングを利用する手はありますが、事業計画やコンセプト作りなど、ハードルは高いです。

ところが貸棚サービスであれば、月額たったの数千円(貸棚料、販売手数料)でお店が持てるんですね。たとえ失敗したとしても、サービス料くらなものなのでダメージは殆どありません。

リスクを最小限にしつつ、夢を実現することが出来るんです。

3.向き・不向きがわかる

本屋を運営する上で欠かせない作業。

「内装準備」「棚の配置の検討」「商品ラインナップの選定」「売上の管理」等々、ほかにもさまざまな業務があります。

好きなことだけでなく、苦手なことや嫌なことにも取り組む必要があります。それらを含めて楽しいと思えるかどうか。

意外と自分自身のことって、理解できていないものです。

僕は数字に滅法弱いのですが、商品の値付けや利益を計算するのは非常に面白く感じました。苦手だと思っていたことが、意外と向いていることに気づいたんですね。

さまざまな経験を通して、新しい自分を発見することができますよ。

本屋体験を通して感じたこと、考えたこと

今回貸棚サービスを通じて学んだことは、「枠を決めているのは自分自身であり、一歩踏み出せば意外と何とかなる」ということです。

僕は大学生の頃から本に興味を持ち始め、本が生活の中心になっていきました。

毎日図書館へ通い、棚の端っこから順番にひたすら読み進める日々。

街の古本屋を開拓し、個性的な書店を散策する。

世の中には数え切れない本があり、現代まで脈々とアップデートしながら受け継がれてきたことを学びました。

そんな生活を続ける内に「僕もいつかは本屋さんが出来たらなぁ〜」と心の奥底で思い続けていたのですが、普通に就職して忙しない毎日を過ごす中で、「自分でお店を開くなんて無理だろうな」と諦めてしまっていました。

しかし、本屋になりたいという夢は「一歩を踏み出す」少しの勇気によって実現できました。

どんなに心の中で理想を描いても、「僕は本屋をやりたいんだ」という気持ちを発信し、行動に移さない限りは現実は変えられません。

コツコツと少しずつ出来ることから取り組んでみる。

はじめの一歩は小さいかもしれませんが、積み重なれば大きな前進になります。千里の道も一歩から始まるのです。

本屋を始めてみたい方は、お近くの地域の貸棚サービスを検討してみてください。

貸棚サービスの収益

最後に本屋の収益を載せておきます。

収益をご覧になられた方はがっかりされるかもしれませんが、売上は以下の通りでした。

<内訳>
【期間】2022/07/22~2023/07/21
【売上合計冊数】25冊
【売上合計金額(税込)】¥9150

月に2冊ペースでしか売れておらず、利用料(月額1500円)を差し引くと大幅赤字となっています。

商品のラインナップや陳列方法を工夫したりすれば、もう少し改善は出来たのかもしれませんね。。あくまで一例として、ご参考にしていただければと思います。

すすめの貸棚本屋さん

1.こもれび書店

2023年5月 京都の丸太町にオープンした貸棚を中心とした書店です。

貸棚のほか、独自の新刊/古書/雑貨などを扱われています。ギャラリーやイベントスペースもあり、喫茶店の営業もされています。

>>こもれび書店ホームページ

2.ふうせんかずら

奈良町にあるシェア型書店です。SELFBOOKSと同じオーナーさんが運営されており、基本は無人ときどき有人の方針で運営されています。店内にはキッチンがあり、おむすび屋さんやカフェもあります。併せて本以外の体験も出来ちゃいます。

>>ふうせんかずらホームページ

3.HONBAKO

2022年9月 大阪堺市大仙中町にオープンした書店です。108人の本箱利用者(箱主さん)がおり、持ち回りで「お店番」を行うことができます。HONBAKOラジオ、読書会、大阪公立大学のボランティアチームとのワークショップ、地域店舗との共同イベントなど、さまざまな取り組みをされている革新的な書店さんです。

>>HONBAKOホームページ

本屋を始めたい方に必読の1冊!

「そもそも本屋って、どうやって運営していけばいいの?」

「出版社や取次、書店との関係性は?」

「新刊書店・古本屋の違いって何だろう?」

そんな時は実際に本屋を営んでいる方々の意見を聞いてみましょう。

おすすめ① 「本屋、ひらく」

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合計21店舗の独立系書店のオーナーたちが、それぞれの店舗を立ち上げることになった経緯や運営してみた感想、これからのお店の未来なんかが記されています。

本屋になるためには何が必要なのか、流通の仕組みはどのようになっているのか。業界人しか知らないような、業界の裏側を学ぶことができました。

個人的には鳥取県の「汽水空港」さんの記事が面白かったです。

本屋をやりたいけれども、なかなか本屋だけの収入だけでは成り立たない。

だから最低限の食事を確保する為に、まずは農業を学んだそうです。

野宿生活から家賃が安いという知人の話だけで鳥取県に移り住み、DIYでおもちゃ屋だった店舗を改装していく。

身の丈にあった規模の空間を自らの手で作り上げていきました。

汽水空港の汽水とは、淡水と海水が混じりあうこと。

世界は白と黒だけではなく、その大半が正解のないグレーで覆われています。

答えは人によって違うし、立場や環境によっても変わり続ける。

世界に幅と揺らぎあれ」というお店のキャッチコピーが、その思想を表現しています。

おすすめ② 「わたしの小さな古本屋」

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岡山県倉敷の美観地区に佇むお店です。10坪に満たない店内には古本と一緒に苔やサボテン、亀などの動植物が共存しています。

店主の田中美穂さんが生み出す独特の空間は、なんだか居心地よく、訪れるだけで自然と生きる気力が沸いてくるような場所でした。

どうして古本屋をはじめたのか、どんな本を周りの先輩たちに教えてもらったのか。

お店を20年以上続けている著者の言葉は、地に着いた説得感があります。

おすすめ③ 「ガケ書房の頃 完全版 – そしてホホホ座へ」

京都市左京区に存在した「ガケ書房」。

店の外には車のオブジェがあり、店内はユニークな本で溢れていました。

当時大学生だった僕は「こんな変わった本屋が世の中にはあるんだ」と衝撃を受け、本屋の概念が180度一変したことを覚えています。

2015年に「ガケ書房」は閉店し、現在の「ホホホ座」へ。

本著では著者の山下賢二さんの幼少期のお話から始まり、今に至るまでの経緯などが記されています。

次の著者の言葉に本屋への想いが集約されているように感じました。

僕は本屋は勝者のための空間ではなく、敗者のための空間なんじゃないかと思っている。誰でも敗者になったときは、町の本屋へ駆け込んだらいい。

書店は本を売るだけが仕事ではありません。

ふらっと気軽に入って、何も買わずに出ていける空間。

そんな空間が街にあれば、苦しい想いをしている人、悩んでいる気持ちがスッと楽になります。

競争社会の喧騒から離れ、余白の大切さと弱者の居場所でありたい。

本著には山下さんの優しさと想いが込められています。