“孤独”な時間を過ごすことで、人は強くしなやかになっていく。
テレビのコメンテーターとして引っ張りだこである、”齋藤孝”さんの著書、「孤独のチカラ」を読みました。
“孤独”と”孤立”は似ているようだけれども、全く異なるポジティブなものである。
- 成功者には孤独の人が多い
- 孤独こそが人を強く、成長させる
このように、“孤独”であることを肯定している書籍になります。
“孤独”という言葉からは、暗い・ネガティブといった、マイナスイメージが付きまといます。
しかし本当は、「よりよい人生を形作るための、エッセンスなんだよ」、という内容が印象深かったので、少しご紹介したいと思います。
“孤独”と”孤立”は違うのだろうか?
その前に、みなさんは“孤独”と”孤立”の違いについて考えたことはあるでしょうか。
「孤独死」という言葉を、よく耳にします。
きっと「孤独」を恐れる人が増えているのでしょう。
しかし、「孤独死」と言われるものの多くは、実は「孤立死」なのかもしれません。
孤立とは、繋がりや助けがなく、孤立無援の状態を指します。
一方孤独とは、精神的なつながりのある人がいない。その結果、一人になってしまった状態を指します。
つまり、
“孤独”な人は、決して人間関係を絶とうとはしていません
自分と同じ考えを持ち、同じ志を持つ人が周りにいない。
他者を求めているけれども、誰とも心で繋がれないので、仕方なく一人を選んでいる状態。
同じ一人であっても、原因やプロセスが異なっているのです。
孤独 = 人との繋がりを求めているけれども、一人になってしまった状態
孤立 = 人との繋がりを絶ち、一人になってしまった状態
“一人の時間”が人を成長させる
テレビで明るい笑顔を振りまいている齋藤さんですが、20代の頃に、暗黒の時代を過ごしたそうです。
大学院時代は、誰とも口をきかない日常を送り、読書ばかりの孤独な日々でした。
読む本は”ミレー”や”ゲーテ”などの名著ばかり。
ベストセラーにはどうしても手が出せず、「高尚な本を読む事が凄いんだ!」という思いに囚われていたそうです。
そんな日々が続いた結果、教授や周囲の学生たちとは、関係がこじれてしまいました。
- 難しい本を読んでる自分は凄い
- 何であいつらは、向上心がないんだ?
周りを批判している内に、人との関わり方が分からなくなってしまったのです。
そう思った齋藤さんはどうしたか?
ひたすら論文の作成に打ち込んだのです。
今まで孤独の中でため込んできた、他人に理解してもらえない苦しみや苦悩のエネルギーすべてを、論文に注入しました。
その結果、論文職人となり、大量の論文を作りまくったんです。
なぜそんなコトが可能だったのか?
それは、一人の孤独な時間に、エネルギーを貯めこんでいたからです。
負のエネルギーを文章へと昇華することに、成功したのですね。
孤独はエネルギーになる
本書の中で印象的な部分があったので、引用してみます。
あり余っているかに思えるエネルギーも、実は年々衰えていく。
特に、三十代以降を生ききるためには、若いうちにエネルギーを技に変えておくのがコツである。
失敗をおそれずに挑戦するには、エネルギーが必要だ。
高齢になっても、もちろん新しいことにはチャレンジできる。
しかし、そうしている人は、若いうちからチャレンジすることが習慣として身についていることが多い。
(省略)
そう考えると、ひとりの時間とは基本的に自分を鍛える時間、何かを技に変えていくために費やす時間だととらえておくべきだと私は思う。
「若いうちにエネルギーを蓄えておくべき」という考え方は、自分にとってしっくりくるものでした。
学生時代に比べると運動する時間は減り、体力はどんどん衰えていきます。
以前は簡単にだったことが次第に難しくなる。
これは年を取れば当たり前に起こりうること。
そうなる前に、ある程度の耐性を付けておく必要があるのですね。
一人の時間を作り、体力を鍛えて技を磨いておく。
すると、歳をとっても過去の資産を土台にすることが出来ます。
資産を使って、新しい挑戦を行うことができるようになります。
孤独を恐れない
私たちは、ひとりになることを恐れます。
- 自分は誰にも必要とされていないんじゃないか?
- 一人でいるのは寂しい
これらの感情は、人間が持つ本能的なものです。
人間が社会的な動物ある以上、人との繋がりは大切です。
なぜなら人間は、一人では生きられないからです。
一方で「一人になる時間こそが自分自身を成長させる」ということも、覚えておく必要があります。
たしかに友達と遊んだり、恋人とデートしたりするのは楽しいでしょう。
筆者も、そのこと自体を否定していません。
しかし、
- 人としての強さを手に入れたい
- 何か成し遂げたいことがある
のであれば単独者として、孤独を受け入れる必要があるといいます。
齋藤さんは次のように書いています。
私が見るところ、ひとかどの仕事をしている人は、間違いなく上手な孤独との付き合い方を持っている。
周囲の人とそつなくコミュニケーション出来るタイプに見えても、それはもう必ずといってもいいぐらい、若い時期に二年なり、三年なり、孤独な時間を体験しているのだ。
その単独者魂が底流に水脈のように流れ続けているから、一人になったらなったで充実できるクリエイティブなひと時を自在に作れる。
目的を持てば、人は孤独になります。
誰にも共感されず、馬鹿にされることもあるでしょう。
しかし、孤独は人を成長させます。
長期間、蝶がさなぎから孵化するのを待っているように、人間にも耐える時間が必要です。
上手くいかなくても、失敗続きでも、馬鹿にされても、目標に向かって突き進むコトです。
若い時期の孤独は、未来を作る礎なのです。
最後に
“孤独”という言葉からは、ネガティブなイメージを想像してしまいます。
暗い、悲しい、寂しいといったように。
けれども、本来”孤独”は自分から求めていくべき、必要な時間なのだと思います。
目的達成のためには孤独を経験し、エネルギーを蓄えておく必要があることを、本著からは学ぶことができるでしょう。
“私は孤独である”
そう感じている方がいれば、一度この本を読んでみて欲しいです。
自分の状況がどれだけ素晴らしい状態なのかを見直すきっかけになるはずです。