読書

児童書『モモ』は”時間に追われる社会人”の心に刺さる | 「ミヒャエル・エンデ」の資本主義社会論

  • “大人”に知っておいて欲しいこと
  • 時間 = 人生
  • 資本主義社会の危険性

ミヒャエル・エンデが書いた、『モモ 』という児童文学作品があります。

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本作を子どもの頃に読んだことがある!
ということもおられるのではないでしょうか?

一見平凡な子供向け作品に思えるのですが、大人になってから読み返すと、大切なことが沢山散りばめられている作品だと気づきました。

だいちゃん
だいちゃん
この記事では本作の中に描かれている「“大人”に覚えて欲しいこと」を中心にご紹介したいと思います。

まずは「モモ」を読んだことがない方のために、少しだけあらすじを。

町はずれの円形劇場あとに住み着いた不思議な少女モモ

モモは”掃除夫のベッポ“・”観光ガイドのジジ“といった友達に囲まれて幸せに暮らしていました。

ある日、「時間貯蓄銀行」から灰色の男たちがやってきます。

彼らは人々に時間を節約するように促し、人生を楽しむ事は無駄であると言い始めるのです。

そうなると町のみんなは楽しくおしゃべりをしてくれなくなりました。

時間に追われた大人たちは、せわしく動きまわり、心までギスギスするようになってしまったのです。

モモの所に遊びにくれていた友人たちはもう来てくれません。

町は異様な空気に包まれます。

しかしモモが周囲の大人たちにそのことを伝えても、誰も聞いてはくれません。

モモは、この「時間どろぼう」たちと戦おうとしますが、逆に捕えられそうになってしまいます。

そこにカメが現れ、『どこでもない家』へ連れていくのです。

そして家の主人であるマイスター・ホラから「時間どろぼう」と戦う術を授けてもらい、戦いの末に勝利するという物語です。

大まかに説明しましたが、さらに一文でまとめると

時間泥棒によって盗まれた「時間」をモモが取り戻す

というお話しです。

それでは物語の根底に流れる、本作のテーマを見ていきましょう。

「時間」に追われる現代人を批判

この物語に出てくる登場人物たちは当初、日々の生活を楽しんで幸せに暮らしていました。

しかし時間泥棒たちがやってきて、

時間節約こそ幸福への道!

時間節約をしてこそ未来がある!

きみの生活をゆたかにするために時間を節約しよう!

などと説いたことによって、人々の人格は変わってしまいました。

日々のゆったりとした暮らしはなくなり、人々はお金を得るために時間を消費するようになります。

日々の生活をお金を稼ぐために消費する。

今までは”生活のためにお金を手に入れたい“という思いだったのに、“お金のために生活を犠牲にして働く”という考えに逆転してしまいました。

エンデが最も伝えたかったのは、この「時間とは何か?

ということでした。

資本主義社会では、”お金”が世の中を支配している

私たちが生きているのは資本主義の社会です。

人々はお金を稼ぐために働き、時間を無駄にしないために”効率化“を求め、”時間に対する労働の対価“を求めます。

効率化を図るためには機械を使い、一切の無駄を削ぎ落としていくことが正義であると考えられる社会です。

エンデはこの考え方に対して、物語の中で警笛を鳴らしていたんですね。

実はこの「モモ」という作品の根底に流れるテーマは、”資本主義社会に対する痛烈な批判“なんです。

時間を奪われた現代人

本当に、お金にならないことは無駄なことなのでしょうか?

時間を無駄にすることも人間にとって必要な営みなのではないでしょうか?

そうした人々にとっての生きる哲学を、今一度問い直して欲しいという思いがこの物語には込められています。

本作では、時間を奪われた人達の姿が描かれていきます。

その姿は、私たち現代人にも通じるものがあるように感じました。

フージー氏の店には、いまではこういう文句を書いた紙が張り出してあります。

時間を倹約すれば、二倍になって戻ってくる!

フージー氏はだんだんとおこりっぽい、おちつきのない人になってきました

というのは、ひとつふにおちないことがあるからです。

倹約した時間は、じっさい、手もとにすこしも残りませんでした

魔法のように跡形もなく消えてなくなってしまうのです。

フージー氏の一日一日は、はじめはそれとわからないほど、けれどしだいにはっきりと、みじかくなっていきました。

あっというまに一週間たち、ひと月たち、また一年、また一年と時がとびさってゆきます。

参考:『モモ』p102

私たちもフージー氏と同じように、時間に追われる中で、貴重な時間を失ってはいないでしょうか?

段々と早くなる”時の流れ”に疑問を感じることなく、やり過ごしていないでしょうか?

“時間 = 人生”そのものである

本作の「”時間”とは生きることそのものだ」というメッセージは、とても心に響きました。

私たちの寿命はぐんぐん延びており、日本における平均寿命は80歳を超えるまでに上昇しました。

人生を仮に80年と考えると、

一日24時間×365日×80年=700800時間

が私たちにとっての寿命、すなわち”生きられる時間“になります。

この大切な時間を削って、将来のお金を稼ぐために充てる。

これは、必ずしも自分を大切にした精神的にゆとりのある状態とはいえません。

生活に追われた方、精神にゆとりがなくなってしまった方は、今一度自身の在り方を見直す必要があるのかもしれませんね。

最後に

ミヒャエル・エンデは数々の名作を残しました。

「モモ」「はてしない物語」「魔法のカクテル」などは、大人が読んでも楽しめる作品ばかりです。

今回ご紹介した「モモ」では”時間“がテーマとして取り扱われていました。

現代社会では、多くの方が仕事や家事で時間を追われ、日々の生活にゆとりを持てなくなっています。

そんな時に本作を読めば、温かな気持ちになれるでしょうし、”ゆとりを持った生活“の重要性を再認識できるのではないかと思っています。

児童文学ではありますが、むしろ大人の方にこそ読んで頂きたいこの一冊。

ぜひ一度、読んでみてください。

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