書評

公務員試験は今後どうなっていく? 『公務員試験のカラクリ』を読んで考えてみた

公務員になるためには、まず筆記試験に始まり、論作文、面接など、いくつかの関門を通りぬける必要がある。その中でも、多くの受験生を苦しめるのが、第一関門である筆記試験。

この試験には、「教養試験」・「専門試験」の2種類があり、身に着けるためには膨大な時間を要します。例えば、教養試験だけをみても、数学・国語・自然科学・経済・理科etcといった幅広さ。専門試験を受けるとなれば、さらに10科目程度、新たな分野が追加される事になってきます。

僕自身、大学3、4年時には学内で行われる「公務員試験講座」に通い、週に10時間程度の授業を約一年半受け続けました。日々の学習にも一日数時間使い、加えて論作文の対策も行っていました。それにも関わらず、最終的には、あまりにも覚えることが多すぎるという理由で、専門試験はあきらめ、教養試験のみで受けることの出来る自治体に絞った次第です。

これはもちろん、僕自身の能力値の低さも原因の一つなのでしょうが、見る限り、他の受講生の多くも同様の気持ちを抱えていたのではないかと感じています。終盤になるに従って諦める人が増え、講座に出る人は減っていきました。恐らく、公務員試験と民間就職は両立出来ないと判断した人が大勢いたのだと思います。

よく言われるのが、公務員試験のガラパゴス化です。民間就職のための試験とは、毛色が異なるため、平行して対策を練ることが出来ない。その結果、民間就職は諦め、公務員一本に絞る人ばかりになってしまうのです。

しかし、最近この「公務員試験」が変わり始めようとしている。例えば、京都新聞は次のような報道をしています。

 

自治体が職員の採用難にあえいでいる。若年人口の先細りで、民間との人材争奪はさらに過熱が予想される。必要な人員を配置できなければ行政サービスに支障が出かねず、各自治体は試験の見直しや、保護者への説明強化に取り組んでいる。

参考文献:京都新聞 2018/2/12

 

人口が減っていることにより、現在(2017年)は空前の売り手市場。学生>企業というパワーバランスになっているのですね。その中で、就職者を確保するために、自治体はどのような対策を検討しているのかというと

 

自治体はあの手この手で学生を囲い込もうと躍起になっている。目立つのは、法律や数学などの専門知識を問う専門試験の廃止だ。宮崎県都城市は17年度から国語や一般常識といった基礎能力を図る適性検査に切り替えた。

参考文献:京都新聞 2018/2/12

 

なんと、多くの自治体で試験の切り替えが行われているというのです。今まで二項対立だった民と官が近づきつつある。”産学連携”のように、お互いが協力することによって、よりよい環境を作っていこうという考えに変わりつつあるのかもしれません。

前置きが長くなりましたが、『公務員試験のカラクリ』という本があります。本書は、公務員試験の現状と問題点について探っていこうといった本でございます。

受験生、教育業界、役所などが各々独自の事情を抱えている中、その状況を分析し、今後どのように制度を変えていけばいいのかを考察しています。非常に分かりやすくまとまっているため、これから公務員を目指している受験生には特におすすめ出来るのではないかと思います。

 

公務員試験は”要領”の良さを計測しているのだろうか

公務員試験では、「教養試験」と言われる試験が基本となります。そこで出題される内容としては、高校までに習ってきた5教科+「数的推理(パズル的発想問題)」や「専門知識(法律や経済)」など。

幅広い分野から出題されるため、中々すべてに手が回りません。それを見越してなのか、大抵の試験では、6~7割が取れればOK。出題傾向を分析し、的を絞って勉強すれば合格できる仕組みになっています。

要求されているのは、“効率よく学習する内容を振り分ける力”“いらない物を捨てる能力”です。つまり”要領よく問題をこなせるかを計測する試験”だと言えるでしょう。

著者は、この試験内容に対して次のような分析を行っています。

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  • 試験は実務に役立つ知識を判定しているのではなく、「数年で部署が変わるという労働環境の中、色々な業務を地道にこなせるか」を判断しているということ。
  • 試験内容が特殊なため、民間企業と公務員試験が両立できず、「ガラパゴス化」しているということ。

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業務に対応できるかを判定するための試験としては役に立つけれども、就活生が”民と官”で分断されている現実がある。確かになるほどという感じです。

実際、私が公務員試験を目指していた時も同じ気持ちでした。一般企業で行われるような一般常識やSPIに公務員試験で行っている対策はそれほど役に立たない。加えて、民間の就活に力を入れると勉強時間が確保できないため、断念せざるを得ない。

“二兎を追う者は一兎をも得ず”の諺どおり、両方を追うと共倒れしかねない状況にあったのです。

本書では、第1章では受験者側、第2章で教育業界側、第3章では採用側という風に、章ごとで当事者が変わっていく構成になっています。それぞれが置かれている現状を分析し、著者自身の視点から、考察が行われていく次第です。

「公務員試験対策本」「合格体験記」というハウツー本は、世の中にあふれていますが、”公務員試験”自体を考察し、分析した本というのは、私の知る限りでは他に知りません。試験を受ける前に読んでおけばよかったと後悔するほど素晴らしい本だったと僕は思っています。

公務員試験をこれらから受けようと考えている人を始め、教育業界や採用に携わっている人まで。”公務員”について改めて考えたい人であれば、何歳からでもオススメ出来る1冊になっています。

ぜひ一読を。