- 仕事に「やりがい」や「自己実現」を求めなくても良い理由
- 「精神的脱社畜」とは何か?
- 「労働観」が変わります
大学を卒業し、社会に出てからなんとなくしっくりこない気持ちを抱えながらネットを彷徨っていた時、目に飛び込んできたのが『脱社畜ブログ』でした。
今の働き方は僕たちに適したものなのだろうか?
と「働き方」への問題提起の記事を量産し、働いている人たちの価値観を揺さぶり続けてきました。
今でこそ「働き方」や「労働観」を発信しているブログやメディアはたくさんありますが、当時は「仕事」に関する記事がネットにそれほど多くありませんでした。
というのも、最近話題の「ブラック企業」や「働き方改革」は世間に認識されておらず、声高に叫ばれていなかったからです。
サービス残業がはびころうが、新人がすぐに辞めようが、それは忍耐力の足りない個人のせい。
会社には問題なんてなく、ついてこれなかった奴が悪いと言わんばかりに、個々人に責任を押しつけていたのも理由の一つでしょう。
管理人の日野瑛太郎さんは、東京大学へ入学したものの、「将来は国を動かす官僚になる」、「大企業に就職して世界へ羽ばたくんだ」という高い理想を抱くエリートたちを尻目に、「働きたくない」という思いを抱え続けていた脱力系のお方。
そんな著者が書いたのが、本著『脱社畜の働き方』でした。
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ブログを読んでいる限りでは、文章が読みやすく、構成も分かりやすいと感じていました。
でも本になればどうなるんだろう?
少し心配していましたが、本になっても相変わらず。
いつも通り、ブログを読むのと同様にサクッと読むコトが出来ました。
社畜を卒業するのに、会社を辞める必要なんてない
『脱社畜』というタイトルから受ける印象として、
- 「すぐにでも会社を辞めて、外の世界に飛び出してしまおう」
- 「会社員なんてやめてしまえばいい」
そんな煽り文句を言われるのでは?
と感じた人は多いのではないかと思います。
しかし実際に中身を見てみると、まったくの逆です。
会社を辞める必要はなくて、むしろ会社を辞めることなく「脱社畜」することをオススメしています。
巷にはフリーランスを礼賛したり、会社なんて辞めればいいと煽る本が溢れている中で、「逆に会社にとどまることも考えようよ」と流行る気持ちを落ち着かせてくれる本書の存在は、重要な役目を果たしているのではないかと感じました。
本書は次のような5章構成となっています。
- 日本の職場は理不尽なことばかり
- 社畜にならないための考え方
- 僕が日本の仕事観に疑問を持つようになるまで
- プライベートプロジェクトのススメ
- 脱社畜の未来
第1章では、日本の職場に蔓延している理不尽さを列挙して、問題提起を行っています。
- 「社会人なんだから当たり前だろう」
- 「仕事が遅いんだからサービス残業するのが当然」
そんな通説について改めて考えていくお話です。
仕事に「やりがい」や「自己実現」を求めなくてはいけないの?
第2章では、「社畜」にならないための考え方を提示していきます。
特に僕が面白いなと感じたのがこの章で、「精神的脱社畜」という考え方があります。
会社に入ると、
- 「これからは社会人だから」
- 「仕事にやりがいや自己実現を求めなさい」
- 「仕事でしか成長出来ない」
などといったコトが平然と語られる土壌が出来上がっているように思えます。
よくよく考えると、別に仕事じゃなくても、休日に好きなことをして、充実した人生を送る人もいるだろうし、仕事以外でだって、恋愛や子育てなど人が成長する機会はあるはずです。
仕事でしか成長出来ないと言われても、働く以前の僕たちは一切成長していないのかといえば、そんなコトはないはずです。
一見筋が通っているように思えるので、「そんなものなのかな?」と受け入れてしまいがちですが、本来「おかしな」論理を押し付けられているだけなのです。
「精神的脱社畜」のすすめ
ただ、一度根付いてしまった価値観というのは、そう簡単には変えることが出来ません。
そこでオススメしているのが、「精神的脱社畜」という抜け出しかたです。
まずはたとえば今まで当たり前だと思っていたコト、
- 残業が当たり前
- 仕事にやりがいを
- 先輩がくる前に新人は出社すべき
といった内容を見返してみることが大切です。
また会社との距離を置くことも重要です。
働いていると気づきにくいですが、一歩会社の外に出ると、広大な世界が広がっているものです。
あなたの働いている会社は何十万、何百万社もあるうちのたった1社に過ぎません。
小学生の頃、毎日代り映えのしないクラスメイトと過ごしていたと思います。
それと同じで、とても狭い世界での常識なのです。
一歩下がって現状を眺めてみることで、従来の価値感を見つめなおすことが出来るようになります。
「精神的脱社畜」とは、会社を絶対視しない考え方が身についた状態のことだ。「会社における労働力の相対化」と言ってもよいと思う。
働くことは尊いとか、社会人の常識とか、会社への忠誠心なんて愚にもつかないものから離れて、今までの日本の労働慣行で社員に強いられてきた理不尽なことを、「社会人なら仕方がない」ではなく「おかしい」と思えるようになること、それが僕の考える「精神的脱社畜」である。
「おかしい」ことは「おかしい」と認識することが重要です。
その上で対処方法を考えればいいのです。
そして続く3章では、著者が「日本の仕事観」に疑問を持った過程が書かれています。
大学生活から始まり、起業、失敗、就職、プライベートプロジェクトに至るまでの過程。
今までブログを読んでいるだけでは知りえなかった、著者の過去も語られているので、ブログを読んでいる方にとってはより楽しめる内容になっています。
次の4章は「経済的脱社畜」を達成するための、プライベートプロジェクトについて記載されています。
そして最後の章では、社会や働き方はこれからどう変わっていくのかといった考察が語られていきます。
これから社会はどのように変わっていくのだろうか。
今回この本を読んで、「今後の日本はどうなっていくのだろうか」という思いが沸々と湧いてきました。
産業革命のときみたいにネットが黒船となり、日本を、いや世界を一つに繋げようとしている現在。
中間層がなくなり、貧富の格差が拡大していくのではないかと不安視されています。
僕たち若い世代は、恐らく年金はもらえないだろうし、賃金も上がらないのではないか?
そんな暗い未来を想像してしまう人も多いことでしょう。
しかし、逆にIT技術が発展することで、働くコトは「義務」ではなく「趣味」になるかもしれません。
ベーシックインカムが整備されれば、働く必要はなくなるし、働きたい人だけが働く。
そんな未来がやってくるかもしれません。
そこまではいかなくても、ネットの力によって、僕たちは簡単に商売が出来るようになっています。
ブログを書くにしても、アマゾンやヤフオクで物を販売するにしても、少ない資金でプライベートビジネスを行えるようになっているのです。
これは、半世紀前には考えられなかったコトであり、とても恵まれた時代にいるのだと思います。
著者自身も、そんな未来が来ることを祈っているとのコト。
この手の本は、お年を召した方から、
- 「最近の若者はこれだから」
- 「甘いことばかり言いやがって」
とお叱りの声を頂くコトがあるとは思うけれども、僕にとっては考え方を見直すいいきっかけを与えてくれる良著でした。
もし、少しでも興味があれば手に取ってもらえると嬉しいですね。
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