- アドラー心理学は”勇気の心理学”
- “未来”は過去で決まらない
- 現在を変えることで”未来”は変えられる
トラウマやPTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉が使われ始めたのは、阪神淡路大震災以降と言われています。
過去に受けた傷が心を支配し、未来への行動を変えてしまう。
トラウマを受けた人は、「抑うつや不安・不眠」といった症状を抱えてしまうのです。
これら脳内を埋め尽くしたマイナス感情は、「寝れば忘れる」といった単純なものではありません。
些細な出来事をきっかけにぶり返す恐怖や不安は、心の中を占拠し、時に他者や自分を攻撃し始めます。
辛いことや苦しいことがあった時には、きっと「トラウマのせいだから」と逃げ道の口実に利用することだってあるでしょう。
でも、本当にそれでいいのでしょうか?
心理学の分野では、「過去の出来事や育った環境などから、人の性格は形成される」と言われています。
それは、「生まれた環境で、人の未来は決定される」と言っているのと同じこと。
過去が未来を決定する。
それは運命と言わんばかりに。
しかし、心理学界の巨匠として知られるアルフレッド・アドラーは真っ向からその見解を否定します。
- 未来を形づくるのは過去ではない
- 現在を変えることで、未来を変えられる
というのです。
本書『アドラー人生を生き抜く心理学 』を読みました。
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こちらはアドラー心理学を研究されている、岸見一郎先生の著作となります。
アドラーの人物像から始まり、考え方・実践方法までが書かれていて、
現在の”悩み”を解消して、望む未来を目指せすためのヒント
が書かれています。
アドラー心理学に対する入門書としても最適だとは思いますが、純粋に「悩みを解決する考え方」を記した本として、興味深く読むことが出来ました。
- 人生に悩み立ち止まっている人
- 不安や苦しみを抱えて心が不安定な人
にオススメの一冊です。
未来は、過去で決まりません。
現在の積み重ねが、未来となるのです。
簡単だけれども実践が難しい、”勇気の心理学”
- どうすれば幸福になれるのか?
- いかに生きていくか?
本書の目的は、人生の指針を与えることにあります。
本屋さんへ行くと、
- 幸福になるための3つの方法
- これだけ実践すれば、幸せになれる
といったタイトルの本が、所狭しに並んでいます。
しかし幸せが簡単に手に入るならば、なぜこんなにも苦しんでいる人が多いのでしょう?
完璧なメソッドがあるのならば、本は1冊あれば十分なはず。
もしかしたら幸福への道は、”簡単“ではなく”厳しい“道のりなのかもしれません。
アドラーの提唱する、考え方や実践方法は特徴的です。
アドラー本人は、次のように言っています。
人間を理解するのは容易ではない。
個人心理学は、おそらくすべての心理学の中で、学び実践することが、もっとも困難である
と。
“最も難しい心理学”といっていますが、内容自体はそれほど難しくありません。
しかし、実践するには困難が伴います。
アドラーの提唱する個人心理学は、
- 本当の自分と向き合う必要がある
- 苦しさを伴う
そのため「勇気の心理学」とも呼ばれているからです。
自分の心の中に潜む、目を逸らしてきた感情と向き合うこと。
思い出したくもない感情に思いを巡らし、深く見つめ直すことが必要になってくるのです。
アドラーの経験を元に構築された”個人心理学”。
その中でも特に重要な概念の一つに“ライフスタイル”があります。
アドラーは、”勇気の心理学” = “個人心理学”を生み出しました。
その特徴は、「自分の弱さに向き合い、苦しさを伴う」ということ。
「理解するのは簡単でも、実践するのは難しい」心理学なのです。
“ライフスタイル”とは何か。
「ライフスタイル」とはアドラーによると、
この世界にいる、自分の人生に対する意味づけ
を指します。
つまり、それぞれが持っている”性格”のことだと思ってもらって構いません。
なぜ同じ内容なのに「ライフスタイル」という、ややこしい言葉を使うのかというと、
アドラーは「性格は変えられるものだ」と考えている
からです。
どうしても”性格”といってしまうと、変えることの出来ない、生まれつきの特性だと考えられてしまいます。
そうではなくて、生まれ持った性質は変えることが出来るんだ。
そう感じやすくするために、あえて”性格”ではなく”ライフスタイル”という、言葉を使うようにしたのです。
“ライフスタイル”を知り、意味づけを変える
私たちは、”性格”は変わらないものだと思い込んでいます。
- 小さい頃から、シャイだ
- 大人になっても、消極的だ
生まれつきの性格は、大人になっても、変えられないと。
もちろん育ってきた環境や生まれ持った性質が、まったく性格に影響しないわけではありません。
しかし、すべてがそんなモノで決められていては、自分の人生はあらかじめ決まっていて、希望を持つことなんて出来ないでしょう。
いかに世界や自分に対して意味づけを行うか
が最も大切なことなのです。
例えばあなたに好きな人がいて、二人きりになれるチャンスがあったとします。
そんな千載一遇の機会を、逃す手はありません。
あなたは勇気を持って話かけようとしました。
その瞬間・・・
相手は目を逸らしてうつむいてしまいました。。
このような状況に遭遇した時、あなたはどのように感じるでしょう?
答えは人それぞれ違うでしょうが、
と考え、卑屈になる人もいれば、
と前向きに捉える人もいるでしょう。
人によって感じ方は違います。
たとえ本当の理由が、「目にゴミが入ってしまい、俯いただけ」でもです。
このように物事をどのように意味付けるかで、180度世界は変わります。
アドラーはこの意味付けを変えることで、「現在を、未来を変えていこうよ!」と私たちに呼びかけている。
そして、
各人の意味付けこそが、”ライフスタイル”を決める
“ライフスタイル”を知り、変えることが未来を変える
と教えてくれているのです。
物事の意味付けを変えれば、世界の見方が変わる。
意味づけさえ変えられれば、世界は変わるのです。
ライフスタイルは、メガネやコンタクトレンズのように、それを通して自分や世界を見ているので、
眼鏡をかけているのに眼鏡を探していることがあるように、あまりに当たり前になってしまっていて、
あるライフスタイルに従って、あるいはそれを通じてこの世界を見、考え、感じ、行動していることすら気づかない。
その意味で、ライフスタイルを変えることは困難である。
ライフスタイルを通じてこの世界を見ていて、しかもかなりバイアスがかかった仕方でこの世界を見ていることを知ることによって、ライフスタイルを意識化することが、ライフスタイルを変えるための出発点である。
ライフスタイルを変えるのが、難しい理由
何はともあれ、「まずは現状を把握をしましょうよ」ということです。
自分はどのように物事を見て、考え、感じ、行動するのかを知っておくことが大切です。
まずは、それを知っておくことが出発点だと言っているのですね。
そして、その後は「自分の望む理想に従ってライフスタイルを変えていこう」と続きます。
明るくなりたいのなら、それ相応の行動を取るようにしましょうと。
もし「明るくなりたい」のにも関わらず、そんなのは自分には無理だというのであれば、それはきっとあなたが「本当に明るくなりたい」とは思っていないからです。
例えば「明るくないから友達が出来ない」と思っている人がいます。
その人は、「明るくなりさえすれば」と考えて、「明るい自分」を理想の姿にしているのでしょう。
けれども実際に「明るい自分」になれたらどうなるでしょう?
本当に、友達は出来るのでしょうか?
もしかしたら、相変わらず友達は出来ないかもしれません。
「明るくなれば」という言い訳が出来ていたのに、実際にそうなってしまうと、自分を守る言い訳がなくなってしまう。
「明るくない」が原因ではなく、違う理由を探さなくてはいけない。
その怖さが勝っているから、自分には無理だといって逃げてしまう。
だからその人は本当の意味では「明るくなりたい」と思っていないとアドラーは結論づけるのです。
ライフスタイルが変わらないのは、自分が逃げているからに過ぎません。
- 自分の行動が成果に結びつかなかったら…
- もし失敗してしまったら….
といった感情が、”人のライフスタイルを変える邪魔をする“のです。
誰もが簡単に理解できるのに、実行に移せない理由がここにあります。
自分の弱さに向き合い、すべてをさらけ出さなくては変わるコトが出来ない。
見苦しい部分をすべて認めなければ、先にすすめないのが、アドラー心理学なのです。
最後に
今回は”ライフスタイル”を中心にお話ししてきました。
この概念は、アドラー心理学を学ぶためには不可欠なものであり、覚えておくとアドラーの書いた内容が、すっと入ってくるようになります。
今までは心理学者といえば、ユングやフロイトの名前が挙がることが多かったです。
その考え方は、
“過去”が”未来”を形作る
物事は”過去”を起点に始まっている
というものです。
一方、アドラーは現在を起点とします。
「今、ここにいる私」の思考や行動を変えれば”未来”は変えられる
過去なんて関係ない。
現在の自分が未来を作っていくのだと。
過去を起因とする心理学から、現在を起因とする心理学へ、日本人の意識が変化してきている。
そして、その流れを作りだしているのは、世界では有名な”アドラー”という心理学者だということは、頭の片隅に入れておいて頂きたいと思います。
もし、”今”悩んでいて苦しいという気持ちを抱えている人は、ぜひアドラー心理学を学んでほしいです。
きっと世界の見方が変わり、行動が変わります。
“勇気の心理学”を、ぜひ体感してください。
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