日本の企業では今まで「副業」を社員が行うことを基本的には認めていませんでした。しかし、終身雇用の崩壊・賃金の低下といった社会の変化により、今後は
その基本方針が変わっていく潮流が出てきています。
今回は副業がなぜ禁止されてきたのか。そしてなぜ今、解禁の流れが出てきたのかについて考えていきたいと思います。
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そもそもなぜ副業は禁止なのか
実は日本には「モデル就業規則」というものがあり、その中の服務規律第11条に以下のような文章が記載されていたことに原因があります。
「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」
参照:厚生労働省モデル就業規則
この条文を多くの企業が参考にしたため、副業を原則認めないという状況になっていたのです。
政府が副業を容認する流れに
しかし2016年の12月26日、政府によって厚生労働省が掲げる「モデル就業規則」において、副業規定を廃止し、副業を「原則容認」にするという発表がなされました。
就業規則のモデルで副業規定を廃止するということは、「国が副業を認めた」ということを意味します。
今まで副業を禁止され、二足の草鞋を履くことが困難だった労働者にとっては大きな転換機を迎えたことになります。
社会が変わろうとしている
初めに少し触れたように、終身雇用の崩壊や賃金の低下といった社会変化により、少しずつ社会に歪みが出てきています。
大企業に入れば一生安泰という時代でもなく、企業の平均寿命は23.5年(参照:東京商工リサーチ)というデータも出ています。20歳で就職したとすると、定年を迎えるまでは約40年ありますよね。
この計算でいくと、自分が会社勤めをしている間に、約2回ほどの倒産を経験することになるんですよ。そう考えるととても怖いですよね。
なぜ解禁の流れになったのか
そんな状況においては、個々人が最悪の状況に備えておくことも必要になってきます。
副業解禁は、一つの会社がダメでも他で補えるようにするというリスクヘッジの役割が期待されているんですよ。
また、副業解禁の狙いとして、世耕経済産業大臣は以下のようにも語っています。
企業は、話題の副業解禁を増やしていくべきでしょう。もちろん、健康管理は前提条件です。
しかし副業は、視野の拡大や、 新しい価値観の入手、新たなビジネスへの可能性にもつながります。
その結果、これまで日本企業全体の課題でもあった「人 材の低流動性」を解決する手立てにもなりえるのです。
なるほど。他国に負けない価値を作りだし、人材の流動性を高めたいという思惑があるんですね。
でも副業解禁、デメリットがあるのでは
一見すると、この副業解禁という流れは労働者にとってメリットが多いように思えます。しかし、物事には必ずメリットがあればデメリットがあります。
まず一つ目は「労働時間が伸びる可能性がある」ということです。
そもそもサラリーマンの賃金は年々下降の一途は辿っており、その賃金の穴埋めをするために副業の存在があります。なので例えば会社の残業代で稼いでいた人であれば、その残業分をどこか他の収入源で補わなくてはなりません。
方法としては、自分でビジネスを行ったり、バイトをしたりなどがありますが、今までもらっていた給料を手に入れるためにはその分労働時間が伸びる可能性がるのです。
二つ目は「格差が広がる可能性がある」ということです。
今までは規則のために抑えられていた、優秀なサラリーマンが副業を行うようになります。すると、アルバイトのような仕事ではく、自分で起業してビジネスを行うような人も沢山生まれてくるはずです。
そうなった時、自分でビジネスを起こせるようなスキルを持った人と、何も持たない人の間に大きな格差が生まれる可能性があります。
副業をOKにしている会社
2016年6月には、政府に先駆けて大手メーカー「ロート製薬」にて副業を解禁する動きが出てきています。
リモートワークが可能であるIT系の企業ではなく、技術流出等を恐れるメーカーにおいてこのような動きが出てきたことは大きな変化に繋がっていくはずです。
そして副業を容認する会社は他にもあり、例えば以下のような会社は副業OKとされています。
・ロート製薬
・サイボウズ
・リクルート
・ヤフー
・サイバーエージェント
名だたる企業ですでに容認されているみたいですね。果たして今後はどのような流れになっていくのでしょうか。
あとがき
副業解禁によって、今後は政府の目論見通りに人材の流動性は高まっていくでしょう。そして今まで副業を出来なかった人の間で、新たな価値を生み出すビジネスも生まれてくるはずです。
しかし、一方では格差が広がり、労働時間が伸びる可能性も否定出来ません。
メリットだけではなくデメリットも考慮して今後の「働き方」を一人ひとりが考えていかなければいけないのかもしれませんね。