今をときめく若手作家、”朝井リョウ”さん。
「桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)」、「何者 (新潮文庫)」といった作品が映画化され、話題となりました。
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実は作家だけではなく、会社員も兼業されています。
作家と会社員の兼業。
中々聞かない組み合わせですね。
この記事では、
- 朝井リョウとは何者?
- 作品の特徴
- 作品に込めた想い
を中心にご紹介します。
朝井リョウとは?
“平成”生まれの”直木賞”作家
朝井リョウの基本的な情報は、以下の通りです。
- 1989年生まれ
- 岐阜県出身
- 早稲田大学文化構造学部卒業
史上最年少で直木賞を受賞した、初の平成生まれ作家です。
他にも多数の賞を受賞しており、映画化されている小説もあります。
大学在学中に作家デビューしましたが、卒業後は会社員となり、2015年までは兼業作家として活動していました。
多彩な顔を持つ
またそれ以外の活動として、ラジオやテレビ番組にも多数出演しています。
例えばラジオ番組では自身の冠番組(高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと)を放送されています。
ラジオの詳細はコチラ☟
高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと
小説・会社員・メディアへの出演をこなす売れっ子であり、多方面で活躍されているんです。
作品の特徴
心の闇をえぐり出す
彼の作品の魅力は、
人の内面を描き出すのが抜群に上手い
ことだと感じています。
例えば、就職活動を行う5人の大学生を題材にした「何者 (新潮文庫)」という作品があります。
この作品では、就職という未来への切符を手に入れるために、お互いを励まし合い、就職活動を乗り越えていこうとする大学生が描かれます。
でも、それはあくまで表面上の話。
裏では、
- 他者を蹴落としてでも、自分だけ成功したい
- 仲間に嫉妬し、心の底では馬鹿にし、見下している
といった、ドス黒い感情が渦巻いていたのです。
“自分の心が見透かされている”と錯覚する
私自身は本作を、就職活動の真っ只中で読みました。
- 周りが次々と面接を通過していく中、自分には内定が一つも出ない
- 「セルフブランディング」などの、流行りに流されている学生
- 型にはまった自己分析を行う人達
当時の私は自分の努力が足りないにも関わらず、彼らのコトを内心あざ笑い、馬鹿にしていました。
他者を見下すコトで、「上手くいかない自分の至らなさ」から目を背けたかったのです。
その姿は、まるで主人公と瓜二つだと感じました。
『何者』の中では、就活生が抱えているけれども、「人には言えないような想いや言葉」が、数多く綴られていました。
- これだけは言ったらダメだ…
- これを言ったら嫌われる
モヤモヤや違和感を感じていたけれど、どうしても言葉にできなかった。
そうした本音が、清々しいくらい文字にされていました。
この主人公、もしかして自分なんじゃない?
ここで大切なのは、本作はあくまで一般的な物語である。
自分を題材にした物語ではない
ということです。
「自分を題材にしている」小説なんて、普通に考えたらありえません。
作家が自分のコトをモチーフにして、作品を作っているはずがない。
にも関わらず、朝井さんの作品は「まるで自分のため書かれた物語なんじゃないの?」という気がしてくるのです。
普段表に出せない、心の闇が次々と代弁されていく。
「自分にしかわからない感情」が吐露されていると錯覚してしまうのです。
そして、次第に小説の中にのめり込んでいく。
それは彼の別作品を読んだ時にも同様でした。
朝井さんはそういった、
人間が持っている、目をそらしたくなるような心の動き
を非常にリアルに描きだします。
そして、「これはあなたのために書いた物語だよ」と語りかけてくるのです。
読者にそんな気持ちを抱かせる作家は、多くはありません。
“意外性”を追求する
「リア充」という言葉があります。
この言葉は「リアルが充実している人」を指します。
インターネット上では一時期、「非リア = リアルが充実していない人」との対比で、使用されていました。
そしてネット上では、「非リア」こそが高尚で素晴らしいものであり、「リア充」はダメだという潮流になっていたそうです。
非リアを驚かせる
その頃のインタビューで、以下のように答えられています。
――『リア充裁判』というお話が入っていますが、朝井さんご自身もリア充を自称されていますよね?
リア充だと思います。
非リア充の方が創作に向いているとか、一切思っていません。
本を書いているくせに、「読書好き」が高尚な趣味に思われることに腹が立つんですよね。
けっこう、読書好きを驚かせたい気持ちで書いたところも、あるかもしれないですね。
読書好きでコミュニケーションが苦手で、と言われたら、「いや、それを個性としてないで、ちゃんと人と話せるようにしなよ」と思うので……。
作家であれば読書好きであるのは当たり前であり、朝井さんも多くの本を読まれていると思います。
それなのに、「読書好き」に対して腹が立っているというのが面白いですね。
読者が望むものを「いい意味で裏切ってくれる彼の小説」は、こうした考えの上に成り立っているのかもしれません。
目標に向かって
朝井さんは「目標を立ててから考えるタイプ」なんだそうです。
- 小説をいつまでに出す
- いつまでにはこんなことを達成する
目標を一つずつ達成することで、前に進んできました。
会社員を辞めたのも目標のため
会社員と作家の兼業だとお話ししましたが、会社を辞めた理由は、「30歳までに達成したい目標があった」からだとか。
インタビューで以下のように答えられています。
――年齢の話が出ましたが、30歳までにやりたいことはありますか?
すっごい具体的なことを言うと、本屋大賞ですね。
30歳でちょうどデビュー10周年なので、それまでに本屋大賞をとって、単行本で実売100万部達成が具体的な目標です。
たくさんの人に読まれていたい、とかじゃなくて、明確な目標(笑)。
達成しなかった場合も、明確にばれるという(笑)。僕の故郷の岐阜にまで届くニュースって、本屋大賞か直木賞くらいしかないんですよ。だからそれは本当にやりたいと思います
参照:【インタビュー】「リア充」小説家・朝井リョウの働き方
最後に
朝井さんは、若手の作家でありながら、人の心の機微や心情を描きだすのが抜群に上手いです。
また若者を題材にした作品が多く、同じ若者世代として勇気づけられるコトも多いです。
心情を描きだすのが上手いということは、彼自身もそれ相応の様々な経験しているはずです。
そして、その心情を吐き出せるということは、決して「性格が悪い」のではなく、揺るぎない意志を持った、リアルの声を大切にしたい人なのだと思っています。(本当の所は、本人にしか分かりませんが…)
映画化作品・小説共に、どの作品を読んでも「驚き」が待っています。
ぜひ一度読んでみて欲しいと思います。