仕事

最新技術を追いかけ続けると、消耗する理由

近年、どんどん新しい技術が出て消えてを繰り返している。
やれAWSだrailsだと流行りの技術が持ち上げられ、みんなが躍起になって群がっているように思える。
もちろん新しい技術を取り入れるのが悪いといっているわけではない。
ただ疲れた人は、一度立ち止まる勇気も必要なんじゃないか。今日はそんなお話。

技術力の根幹とは

どんなものだって、土台が大切だ。
基盤が緩ければ、上層部は簡単に崩壊してしまう。
家をしっかり建てるための条件は、まず地盤が緩んでいないこと。次に柱や土台を組み上げ、最後に屋根を取り付けていく。
地盤が緩んでいては、どれだけ優れた柱や瓦があったところで無意味である。所詮そんなものは砂上の楼閣のようなもので、ジェンガのようにいつ崩れてもおかしくない。グラグラ揺れ続けている。

技術だって家づくりとまったく同じなんだと思う。
まずは根本的な理論を理解しよう。
どうやってコンピューターが動いているのか。ハードはどんな種類があって、どんな役割を担っているのか。
これは家づくりの地盤に相当する。

これらをベースにして、新しい技術を習得していけばいいのだ。
てっとり早く身につけたり、できる気分になるからといって、基盤を作らずに手を出すから消耗する。
終わりの見えない”流行りの技術という海”に迷い込んでしまうから疲れてしまうのだ。

できるエンジニアは、何を使っても強い

僕が優秀だなと感じるエンジニアは、流行りの技術になんて飛びつかない。
自身の技術力を信頼し、限られたリソースの中で結果を出してしまう。

例えば汎用的なテキストエディタ。インフラにしても、開発にしても、誰もが使用するツールだ。
しかし、使える人と使えない人では差がつくツールの代表かもしれない。知られていない機能はたくさんあって、それらを使いこなせると天と地ほどの能力差が出てしまうのだ。

これはスポーツに置き換えてみるとわかりやすい。プロの卓球選手なら、100均のラケットであれ結果が出せる。野球のピッチャーであれば、投げるボールが変わっても、ある程度の精度で投げられるだろう。

本来スキルとは、そのようなものなのだと思う。

スキルの高い人は、同じツールを使っても、できることが全然違う。そして必要なものをその場で調達して、不要なものはさっさと捨てる。

ツールさえ良ければ、結果が得られると誤解してはいけない。
凡人がツールでアドバンテージを得られるということは、うまい人が使用したらもっと凄い結果が得られるという視点が抜けている。

まずはツールに頼らず、自身の基盤を固めるのが先決である。

バカにされても、基礎を固める

基礎を磨く過程は、地味でつまらないことが多い。
簡単ですぐに結果の出る技術とは違い、本当に前へ進んでいるのかわからない、同じところで足踏みをしているような気分にもなる。

それを見て周囲の人たちは、こんなアドバイスをするかもしれない。
「そんな古い技術じゃなくて、新しいものが素晴らしいよ」
「こっちの方が早く結果が得られるよ」
僕自身は何度もそのようなアドバイスを受けた。そっちに飛びついてしまいたい、楽になりたいという気持ちになったこともある。けれども経験上、楽な道の先は行き止まりに続いていることが多い。もしかしたら、その先は崖になっているかもしれないのだ。

世界の王貞治は来る日もバットを振り続けた。野球の中でも素振りは単調な作業に見えるし、実際にボールを打つわけでもないので敬遠されがちである。それに単純に面白くはない。しかし、素振りには様々なエッセンスが詰まっている。
バットを振った時の空振り音、微妙な指先の感覚や体の使い方。全神経を身体に集中させて、自身との対話ができるのだ。

一見単純に思えることほど、奥が深いものだと感じている。
それらは基礎として一般には知られているが、単調でつまらないがゆえに、大半の人は素通りしようとする。
もっと基礎の重要性は語られていいものだと思う。

最後に

地味でつまらない作業を積み重ねていくと、いつしか展望が拓ける地点に辿りつく。
ちらばっていた点が線となり、一つの図形を炙り出していく。
そして蓄えてきた知識が綺麗につながった瞬間、霧が晴れたように一気にすべてが理解できるようになる。

学習の習熟度は、比例して上がっていくわけではない。
ある一定のレベルに達するまではじわじわと徐々に習熟度が上がっていき、ある日を境に一気に理解できるようになるのだ。

ただそこに辿り着くためには、つまらなく退屈な反復練習が欠かせない。
派手ではなく、目立つことのない地味な積み重ねこそが、基盤を作るのである。

流行りに疲れてしまったら、一度立ち止まってみよう。
そして、今の状況を分析してみよう。
あなたの基盤は固まっているだろうか?
上かさだけを積み上げて、地盤はグラついていないだろうか?