読書

「性」を売る女性と貧困の連鎖 |『彼女たちの売春(ワリキリ)』を読むと理解できるワケ

女性、特に若ければ若いほど「性」の価値は神聖で高貴なものとみなされがちです。

「性」を売ることで女性は大金を手にし、男性はつかの間の快楽と愉悦を得る。

表のメディアでは決して取り上げられることはありませんが、社会のいたる所で「売春行為」は行われています。

彼女たちが性を売る理由は、果たして「お金」だけが理由なのでしょうか?

彼女たちの売春」の著者である荻上チキさんは、2011年から2017年まで、毎年100人にも渡る売春(ワリキリ)女性を取材してきました。

売春女性に直接インタビューを行い、これほど多くのデータを集めた人物はまずいません。

この記事を読めば、

  • 売春(ワリキリ)とは何か?
  • なぜ売春するのか?
  • 貧困の種類と貧困の連鎖

これらの理解が深まります。

そもそも売春(ワリキリ)とは

ワリキリは、風俗店舗に所属するものでもなく、グループで裏風俗を作るのでもなく、特定のメディアを活用し、個人で客をとって行う売春の形態だ。

性労働には、

  • 風俗
  • AV
  • デリバリーヘルス
  • 遊郭(飛田新地など)

様々な形態が存在しており、ワリキリは、その一種といえます。

なぜ売春するのか?

必ずしも「貧困」が原因ではない

全国各地の女性にインタビューをする中で見えてきたもの。

それは彼女たちが売春を行う理由は、必ずしも貧困が原因ではないということでした。

もちろんお金を理由に始める人はいます。

しかし

  • 興味本位で始めた
  • 友達の紹介でなんとなく

ワリキリを始めた理由は様々であり幅広いです。

そのため、以外にも楽しんで仕事を行っている女性もいます。

例えば、アイは20歳の大学生。

一人暮らしの生活費や大学の学費などを稼ぐ必要があったことが始めたきっかけになりました。

もちろん当初は、お金を稼ぐことが目的でした。

しかし、いつしか奉仕精神の強い彼女は、セックスワークが天職だと思うようになっていくのです。

また、年上の男性は文化的な体験をさせてくれるなど、「大人の世界」を覗かせてくれるのもメリットだといいます。

生きていくための「売春」

確かにアイのように、楽しんで仕事に組んでいる女性はいます。

しかし一方で、生活苦や精神疾患(自傷行為や過食など)を理由に、昼の仕事に就くことが出来ず、仕方なく夜の仕事に流されてしまった女性も多くいるのですね。

本当は嫌だけれども、生きていくためには仕方がなかったのです

だいちゃん
だいちゃん
いやいや、でも夜の仕事以外にも一杯選択肢はあるよ。

生活保護もあるし、人と接しない仕事もなかにはあるだろう。

そんな意見も当然あると思います。

けれども実際には

「選択肢があること」と「選択できること」

はまったく別の問題なのです。

虐待や暴力を受け続けた彼女たちだが、NPOや行政などに頼ったことがあるという話は殆ど聞いたことがない。

児童相談所に保護された経験のあるユズは、「自分が悪い子だから」

児童相談所や傾圧にやっかいになったのだと信じていた。

家出をして街をさまよった者も、自分で稼げる年齢になってから実家を出た者も、自分で稼げる年齢になってから実家を出た者も、そうしたセーフティネットよりも、ワリキリをすることのほうが、選択肢として身近なものなのだ。

人は周囲の環境に左右される生き物です。

「朱に交われば赤くなる」という諺があるように、周囲の影響を受けて簡単に染まってしまいます。

友達から紹介されたり、好きな男性から薦められれば、売春はより身近なものと感じてしまうのです。

なので、本来は「セーフティネットに頼る」という選択肢があったとしても、それは存在しないことと同じになってしまうんです。

あらゆる社会問題は「私たちの問題」である

一般論で言えば、ワリキリに手を出すことは断罪されるべきことなのかもしれません。

しかし、社会から排斥された彼女たちを生み出したのは、紛れもなく私たちの社会なのです。

  • シングルマザーによる貧困
  • 生活保護
  • ブラック企業

そうした問題が議論されていることをよく耳にしますよね。

これは、多くの人が問題意識を持っており、声を上げたから初めて注目されるようになったんです。

ただ「売春」に関しては当事者の総数が少なく、認知されにくいために問題として取り上げられることは考えにくい。

社会から排斥されて、苦しんでいる人たちが大勢いるにも関わらずです。

僕は、もっと社会問題として議論されるようになって欲しいと思いますね。

2種類の貧困

荻上さんの調査によると、売春女性は以下の問題を抱えていることが多いそうです。

  • 経済的な貧困
  • 人間関係の貧困

経済的貧困は、一般的に言われる貧困のことを言います。

お金がなく、生活が苦しい状態のことを指します。

一方、人間関係の貧困(社会的孤立)というのは、親がコミュニティに上手く溶け込むことが出来ず、職場や地域から孤立

誰の支援を求めることも出来ないような状況です。

その結果、次のような問題を抱えてしまうのです。

  • 精神疾患
  • アルコール依存
  • 暴力を振るう

「貧困」の連鎖は繋がっていく

ここで注目すべきなのは、「貧困は連鎖する」ということです。

家庭の基盤が不安定であれば、親が病気や失業すれば簡単に家庭が崩壊し、子供がネグレクトされてしまう恐れがあります。

その結果、子供は「満足な教育」や「豊かな生活」を送ることができず、将来は給料の低い仕事にしか就くことができなくなる。

親から子へ。

貧困の連鎖が続くということです。

これは「親が子供に非常に大きな影響を与える」ことを意味しています。

子どもたちには、何の罪もありません。

一刻も早く助け船を出して、負の渦から脱出できる手助けをする必要があるのではないでしょうか?

最後に

今回「彼女たちの売春(ワリキリ)」を読んで、社会には「問題として取り上げられない問題」があることを身にしみて感じました。

本の中で語られる彼女たちの生々しい告白は、読んだ人に考えるきっかけを与えてくれるでしょう。

また昨今では性労働に対する書籍が、いくつか出版されています。

職業としてのAV女優」、「さいごの色街 飛田 (新潮文庫)」の書籍を読めば、どのような人たちがアンダーグラウンドに存在し、社会は何をすべきなのかが見えてきます。

臭いものには蓋をするのではなく、事実として現実を受け止めた上で、一人ひとりができることがないか考えていきたいです。

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