客先常駐

客先常駐では帰属意識が育たない! ? | エンジニアが自社を嫌いになる仕組み

会社への所属意識は、仕事のモチベーションに直結する。

マズローの5段階欲求説が示すように、人間にとって「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認の欲求」「自己実現の欲求」は非常に大切です。

人間の欲求は5段階に分かれていて、低次の階層が満たされると次の欲求に向かっていくという理論です。

客先常駐では「所属の欲求」が満たされにくいため、自己実現を達成するのが困難です。

客先常駐SEには、「帰属意識が持てない」「自社に愛着が湧かない」という悩みがつきもので、次第に「会社が嫌いだ」「会社にいる意味が分からない」といったネガティブな感情に変わっていくことが少なくありません。

ではなぜ、客先常駐SEの帰属意識は低くなってしまうのか。

今回はその理由と原因について考えていきたいと思います。

客先常駐SEの帰属意識が低くなる理由

自社との距離が開いていく

客先常駐SEの職場は自社ではなく、顧客企業であることが大きな要因だろう。

毎日現場へ出勤し、自社には月に1回の帰社日しか帰らないのが一般的。年間を通して、一度も自社には行かないというエンジニアもいる。

現場で長い時間を過ごしていれば、次第に愛着が湧いてくる一方で、自社への興味は薄れていく。

「自社の営業は何もしてくれないけど、現場の社員は仕事を教えてくれたりして頼りになる」、となれば次第に所属企業へのネガティブな思いが募っていくのです。

心理学には「単純接触効果」という理論があり、接触頻度の高いものほど好意が湧いてきます。毎日通う現場は好きになり、普段行かない自社には興味がなくなるということですね。

所属企業は基本的に、エンジニアを現場に放り込んだらそのまま放置。大きなトラブルが起こらない限り、干渉されないことも多い。私の所属していた企業では、毎日メールでの形式的な業務報告をするだけで、帰社日すらありませんでした。

現場への愛着が湧く→現場の仕事が好きになる→自社への所属意識が薄れる→自社への不信感・不満が募る→転職する

というのが転職までの流れとなる。

仕事に達成感が感じられない

客先常駐SEの多くは、他社メンバーとチームを組んで仕事を行っている。

業務はリーダーから依頼され、仕事は「できて当然」のような扱いを受けることが多い。

常駐SEは下請けであるため、切り出された単純作業をいかに素早くこなせるかが要求されたりする。創造性の少ない単純作業をするのは辛いものがあり、IT土方という言葉の由縁となっている。

プレッシャーと孤独感

達成感にも通じることだけれど、常駐SEは常にプレッシャーと戦っている。

「顧客の目に常に晒されていること」、「成果物を要求されること」などから精神的に疲弊している人は多い。また常駐先で一緒に働いている同僚は他社の社員なので、気軽に相談や質問が出来ない場合がある。

本音で話し合える同僚が少ない環境で働くのは、想像以上にストレスを感じるだろう。

頑張っても評価されていないように感じる

客先常駐を行っている企業では、評価制度が曖昧なことが多い。

その理由は、評価する人間が現場におらず、個人を評価するのが難しいためである。

これは、「評価者がいないにも関わらず、評価が決定される」ことを意味している。

ではなにを指標にするのかといえば、資格や勤務状、勤続年数を参考にするのだが、これらは現場でのパフォーマンスをまったく考慮に入れない評価方法である。

仮にパフォーマンスを考慮に入れるとしても、明確な指標がないので頑張りようがないというジレンマがある。

結果として、顧客に貢献していたり、頑張っているエンジニアほど「会社は自分の頑張りを理解していない!」という怒りや不満が蓄積していくことになる。頑張っても頑張らなくても変わらないと思わせる評価制度が、エンジニアのやる気を奪っていくのです。

客先常駐の契約は通常、「時間」で決定される。例えば、140-180時間エンジニアを50万円でお貸しします、といった具合だ。

すると、能力がないから残業しているだけなのに、「労働時間が長いだけで自社評価が高くなる」といった状況が起こりうる。私自身は、無駄な残業をしている社員が評価される環境に納得できないことが、転職のきっかけとなった。

会社のビジョンがわからなくなる

「エンジニアのためになる会社を作りたい」、「自社にしかできない素晴らしい製品を作る」

そうした素晴らしい企業理念を掲げていたとしても、SES企業の行っていることは派遣会社と対して変わりません。

エンジニアを商品として、他社への労働力として提供する。ロースキルであっても、エンジニアを沢山送り込むほど儲かるビジネスモデルになっているので、SES企業の目的はエンジニアの調整弁的な機能を果たすことにあるのだろう。

エンジニアは会社の商品である。

高スキルのエンジニアは利益率が高く、低スキルのエンジニアは利益率が低い。薄利多売か厚利少売で利益を上げるかの違いに過ぎない。

エンジニアが辞めれば利益は落ちるが、また新しい商品を仕入れればいいだけのこと。

人を右から左に流すというビジネスモデルがベースとなっていること自体がエンジニアのモチベーションを低下させ、企業のビジョンに共感出来なくなる要因になっていると感じる。

客先常駐というビジネスモデル自体に原因がある

エンジニアの帰属意識がなくなるのは企業運営の仕方ではなく、客先常駐というビジネスモデルそのものに原因があると感じている。

スキルの向上や顧客貢献については、口酸っぱく語られるのに、帰属意識やモチベーションについては語られない。

客先常駐というビジネスモデルが生まれて数十年が経過しようとしている。そろそろ人間の精神的な側面にも注目してもいいのではないだろうか。

あなたが働くのであれば、どのような企業で働きたいだろう。

  • 組織の中で満足感が得られない会社
  • 組織の一員だと感じられない会社
  • 頑張っても評価されない会社

誰だってこんな会社で働きたいとは思えないだろう。しかし、客先常駐ではこうした環境が当たり前に存在しているのです。

最後に

会社で働く際に何を重視するか。

  • スキルを磨ける会社
  • 給料の高い会社
  • 家から近い会社
  • 人がいい会社

企業選択にはそれぞれ軸があって、すべてを手に入れることは出来ないけれど、その根幹には「モチベーション」があると思っている。

スキルを磨けるなら頑張ろう!
良い人たちばかりで毎日が楽しい、頑張ろう!
給料が高いから貢献しなくては!

いずれも個人のモチベーションに直結している。

なのに帰属意識はモチベーションに直結するにも関わらず、蔑ろにされがちである。

もう一度、重要性について見直してみるべきだろう。